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福島県の民話

五年の命の使いよう
標準語 English French Viesnamese chinese

ほうら、正月になっとなぁ、みんな村の人だちは、若(わげ)ぇ物だちもそうだけんじょ、年よりだちはそんな正月終わってから行ぐけんじょ、村の若(わげ)ぇ物二人がな、柳津(やないづ)の虚空蔵(こくぞう)さまさ、お参(めぇ)りに行ったど。
そうしてなぁ、和尚様に御祈(ごき)とうしてもらってな、帰ってきたど。
ところがそんどき、和尚様に言わっちゃど。
一所懸命、和尚様こうやって見っがらな。
「はぁ、これはこれはおめぇ達(だつ)、五年の命だぞ」
ってずわっちゃど。
「なぬ、和尚さん、おれ達(だつ)五年しか生きられねぇのかよ?」
「そうだ、そうだ、そう出たど。ほら見てみろ。ここさ、運勢欄さ出てんだがらな。今日から五年の命だ」
いやぁ、二人は家さ帰って来たど。
一人の息子はな、
「五年しか生きられねぇなら、おらぁあど稼(かしぇ)ぇでらんねぇ」
って毎日毎日うめぇもの食って、稼(かしぇ)ぇがねぇで遊んでばっかいたど。
そうだけんじょ、もう一人の息子は、
「五年しか生きられねぇなら、おれは、あれもやんなんねぇ。これもやんなんねぇ。やがて子めら達(だつ)の小屋一つ建ててくれんなんねぇ」
と思ってな、一生懸命働いだど。
ところが、五年過ぎたっけが、両方ともな、だぁれも死がねだど。
じゃもんだがら、一生懸命働いた者は、親が残した財産の倍にもなっだど。働がねぇでいた息子は、親の財産きれぇに無ぐしまったっつう話だ。
じゃがらな、
「人間はな、明日に死ぐったって、死ぐの待ってんじゃなって、稼(かしぇ)がねぇではいらんねんだぞ。明日に死ぐったって、稼(かしぇ)がんなんねぇもんだぞ」
って教らっちゃ話なんだ。
はい、ざっとむがしさかいもうした。

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