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福島県の民話

カエルの花嫁
標準語 English French Vietmnamese chinese

むがぁしむがしの話だぁ、これも。
山ぁの村にな、正直者の若(わげ)ぇ者がいたど。
「あぁ、雪も消えたぁ。おらぁ、田んぼ雪消えて、いづぅ田植えさ行っていいかなんだか、わがこれちょっくら見てくっがなぁ」
なんて、山から下ちてなぁ、来たど。
里前(めぇ)さ来たらなぁ、
「わがの田んぼも雪消えて、あぁ、これは雪消えて田もうなわれるわぁ。今一週間もしたら田植えさ来(こ)んべぇ」
なんて見て、たんまりしてから帰ってくんべぇと思ってたらな、土手にでっがいヘビがいたど。
「あらら、にしゃもあったげくなったから出てきただな」
って、ヘビさ声かけたらな、見たらヘビがカエルんどこ半飲みにしてんたど。それもな、顔出して、おしりの方から飲んでんだと。そのカエルの顔見たらな、
「助けてくんつぇ、助けてくんつぇ」
つうてるような顔なんだと。息子もむぞせくなっつまってなぁ、
「ヘビ、ヘビ。そんなカエル生飲みするんでねぇ、ほら、ほきだせぇ、ほきだせぇ」
っつってんだけんじょ、ほきださねぇだと。
カエルの顔はほんと、可哀そうな顔だから、息子、また、くっついでて、
「ほら、ヘビ、ほきだせぇ、ほきだせぇ」
(それでもヘビが)ほきださねぇがら、今度は、わがヘビんどこさ、土下座して、
「おれ、こうやって頼むだから、カエルんどこ、ほきだしてくろぉ」
そうずったど。
そしたら、わかったのがなぁ、ぷいーっと、ほきだしただと。
カエルがぴょーんと飛び出してなぁ、ぴょんこぴょんこ、ぴょんこぴょんこと、その息子の顔を振り返り振り返り(逃げていった)。
「ありがとう、ありがとうってずってんだべなぁ」
なんて(思って)、息子も気持ちよくなってなぁ。
「あぁ、今日はいいことしたなぁ。カエルの命でも助けただぁ。あぁ、人の命助けるっつうことは、こんなに気持ちいいのかなぁ」
なんて、家さ帰ってな、ちょっとばっか残ってた酒ぇ飲んで、寝たど。
そしたら、その明日の晩げになったらな、トントン、トントンって戸を叩く者がいたど。
「はぁて、こんな山さなぁ、おれんとごさなんの、お客なんの来たことねぇだけんじょ、なんだべなぁ」
なんて、出て戸を開けて見たど。   ※むぞせ・・かわいそう
そしたら、きれぇな姉(あね)さまが立ってんだと。
「いやぁ、道に迷っちまってぇ、これから家さ帰るよねぇがら、一晩泊めてくないしょ」
つうんだと。
「一晩泊めるったって、おれ一人暮らしでなぁ。はぁ、だけんじょまぁ、しょね。気の毒だなぁ。んじゃまぁ、待ってろ、部屋片付けてくっがら。まぁ泊まれ、泊まれ」
なんて、泊めたど。したら、明日さげになったら、朝早ぐにこら行ぐのかと思っていたら、その娘がな、手ぬぐいなんかかぶってずるいさ火ぃたいてお湯など沸かしてんだと。
「なぁんだ、そなた、ほら、早く帰んねぇでいいのか、ほら、帰れ、帰れ」
「いやぁ、実はおれは、身よりのねぇもんなんだす。おれんどこ嫁にもらってくないしょ」
つったど。
「なぬ?嫁に?おら、見たどおりのこの貧乏の家だぞ。おれんどこさ嫁なったって、しやわせになんかならねって、いいから、帰れ、帰れ」
「そうずわねぇで、置いてくなんしょ、もらってくなんしょ」
つうんだと。あぁ、いい女(おなご)だもから、息子もな、悪(わり)くもねぇと思ったんだべなぁ。
「そうかぁ、そんじゃ嫁になれぇ」
なんて(嫁になった)。
はぁ、その嫁もなぁ、一生懸命働くだとぉ。そうして、かさまが使った機(はた)っちゅうなの皆出して機(はた)織やって、機(はた)おっずと、
「はぁ、売ってきらせぇ」
そうやって稼ぐから、とてもな、金持ちになったど。
そのうち、盆になっただと。盆になったらな、嫁がな、
「あの、お通夜(づや)の法事にちょっこら行って来てぇから、暇くちくなんしょ」
って、そうずったど。
「なぁんだ、お通夜(づや)法事なっと、にしゃ誰もいねぇなっつけが、ほんじゃ、お通夜(づや)いてやったのが」
「はい、いてやったんだぁす。そんじゃか、法事だから、ちょっこら行って来てぇから」
「はぁ、行け、行け。ほんじゃ、おれも一緒に行ぐべぇ。まだ挨拶もしねぇでいだがら」
「いや、いいの、いいの。一人でいいの」
っつうんだと。
一人でいいの、いいのっつったって、まぁ、一人でやるわけにもいかねぇから、後ろからしらっぱぐれて、追いかけて行ったど。
とんとことんとこ、山の方さ行ぐだと。
(なぁんで、こんな山の方かなぁ)
と思って目ぇそらした拍子に、姿が見えなくなっちまっただど。
(はぁて、どっちゃ行ったんだべなぁ)
と思って、まっすぐ行ってみたらな、一軒の古寺があったど。
(ここも元はお寺があったがら、人もいただべけんじょ、人がいなくなったらお寺も廃業になったんだなぁ)
と思って、お寺をぐるーっと回ったらな、草だらけの池にな、でっがい葉っぱの上に、でっがいカエルが一匹乗ってんだど。
(ははぁ、こんなどこになぁ、カエルがいんだなぁ)
なったら、そこさ、回りさぐるぐるぐるーっと見てるうち、細けぇ、ちぃちぇぇカエルがいっぺぇ出てなぁ、ずねぇカエルがゲェッと鳴くと、細けぇちぃちぇぇ子めらカエルがゲェッ、ゲェッて(鳴く)。
ゲェッ、ゲェッ、ゲェッってまぁ(鳴く)。
(これがカエルの音楽会つうもんかぁ。そんなのいつまでも見ったって面白(おもしゃ)くねぇ。帰んべ、帰んべ)
帰るすき、足元にあった石ぽいーっと蹴っ飛ばしただと。
そしたら、その蹴っ飛ばした石がな、真ん中のでっがいカエルさ当たったもんだから、カエルがぶくぶくーって沈んぢまったど。
そしたら周りの子ガエルたちも、ぶくぶくぶくーって沈んぢまった。
(はぁ、帰んべ、帰んべ)
と、家さ帰ってきたど。
まぁ、嫁も帰って来てねぇ。一人でまんま食って、寝んべと思ったら、
「遅くなりやしたぁ」
なんて、嫁帰って来たんだと。
「変わりねぇかったか、みんな」
「変わりはねぇだけんじょ、法事の最中になず、誰が投げた石だが、和尚様さ当たって、和尚様大けがして、そんじゅ遅くなったのんす」
ってそうずったど。そしたら息子が、
(ははぁ、これはカエルだな)
と思って、
「そのな、石、てっぽって当たったのな、その石投げたのおれなんだわい。にしゃ、カエルんねぇが」
ってずったど。そしたら、嫁がな、
「はぁ、そうだがらず。おれカエルなんだがらず。カエルだけんじょ、春先ヘビに飲まれっどころを、あなたさまに助けてもらったがら、なんでかんで恩返ししねなんねぇ思って人間に化けて、そして恩返しに来ただけんじょ、カエルだっつうことわかっては、もう、ここにいるよねぇがら、こんじごめんしてくなんしょ」
って、裏口からぴょんこぴょんこと出て行ったんだと。
カエルでさえも、恩を受けたことは忘れらんねぇっつうことと、カエルの命でも大切だっつうことを、人としての命の大切さと、恩を受けたことは忘れらんねぇっつうことを、教えた話だべな。
はい、ざっとむがしざけえもした。

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